昭和27年創業、1泊2,800円の激安レトロ旅館を見つけたので泊まってみた

 青春18きっぷでの旅行中に宿を探していたら、「素泊まり1泊2,800円」とめちゃくちゃリーズナブルな旅館を見つけてしまった。ビジネスホテルなら納得できるが、旅館でこの安さはあまり見かけない気がする。
 今回の旅のテーマは“節約”でもある23歳ニート、わたくしモラトリアムぽ子。さっそく宿泊してきたので、その様子をどうぞ。

最寄駅に到着

 かつては毒ガス工場、今ではウサギの島として有名な大久野島へ行ってきたこの日、帰りに泊まる宿として予約したのが広島は三原、「山根旅館」だ。

 最寄りの三原駅に着いたのは19時をまわった頃。街灯の少ない道を駅から5分ほど歩いて行くと…

 …あった。暗くてよくわからないが、雰囲気はフツーに「風情ある旅館」という感じがする。

 意を決して中に入ってみると、誰もいない。手で鳴らすタイプの呼び鈴があったので鳴らしてみると、奥から「はーい」という声とともに男性のスタッフさんが出迎えてくれた。

 そのまま一般的な旅館と同じくトイレやお風呂の場所を案内してもらう。部屋にはトイレ、お風呂は付いておらず、全て共用だそうだ。まぁこういう宿には泊まったことがあるので特に物珍しさはない。
 そんなことより気になったのは、床がベコベコ凹むことだ。歩くたびに体重の重みで床が沈む。すんげえ。まさか歴史の深さをここで体感させられるとは…。

 さらに続いて、2階の客室に行くために“古い家によくある、幅が狭くてめちゃくちゃ急な階段”を登った。手すりはない。おばあちゃん家にあった階段とはレベルが違う。そんでもってスーツケースは自分で運んでね〜というスタンスなのか手伝ってもらえず。いや、正確には「手伝いましょうか?」と言ってもらえたが、その時にはもう階段の途中まで上がってしまっていたので現実的に手伝ってもらえる状況ではなかった。これがけっこう怖くて、膝を震わせ、息を切らしながら登った。
 ……まぁこれも2,800円という格安料金で泊まらせてもらう手前、プチ絶叫アトラクションか何かだと思えば割りきれないことはない。

 階段を登ったすぐ脇の部屋へと案内された。これが部屋の扉。決してトイレの扉ではない。どうやら今日わたしが泊まるのは「うぐいす」という部屋らしい。

 スライド式の戸を開けると・・・

玄関から見た図
部屋奥から見た図

 おほ〜、想像の倍は広い。そしてなかなかの年季。

 案内してくれた男性スタッフがいなくなり、部屋の戸を閉めようとすると、鍵の隙間からサササッと黒い何かが這った。……蜘蛛だ。どうしよう、と思った。蜘蛛を見た瞬間まぁまぁデカめの声で叫んでしまうくらいには私は虫が苦手だ。さきほどのスタッフを呼ぼうかとも思ったが、客室にはフロントにかける電話機がないのでスタッフを呼ぶためには一度フロントに出向かねばならない。ここで1番怖いのは、目を離している隙に蜘蛛がどこへ行ったかわからなくなること。となると自分で対処するほか道はない。旅行中にムダな殺生はしたくないので、ティッシュで蜘蛛をそっとすくい、廊下にポイと放った。……いつかこの蜘蛛が「その節はありがとうございました」と命拾いした恩を返しにきてくれることだろう。

 ……話を戻すと、客室は年季を感じるものの、まるで田舎のおばあちゃん家にきたかのようなホッとする感じがある。
 敷布団じゃなくベッドなあたりも余計にリアル。布団と枕カバーの絶妙な色合いとか、ベッド後ろの棚の感じとか、敷いてあるマットとか………すべてが“おばあちゃん家にありそうなもの”の最適解だ。

 それでいてしっかり旅館らしくテーブルと座椅子もあるし、

 お茶と菓子まで用意されている。ちなみに菓子は「なごやん」。まさか広島で名古屋銘菓を出してくるとは、なかなかユーモアを交えたもてなしだ。

 ベッド脇のカゴには、浴衣、タオル、歯ブラシなどのアメニティが用意されている。この“ピンクカゴ”もお年寄りの一家にひとつは必ずあるであろうデザインだ。もしや帰省してくる私のためにおばあちゃんが用意してくれていたのか…?

 汗をかいていたのでさっそく1階にあるお風呂へ。途中、中庭から虫の鳴き声がたくさん聞こえてきた。決してうるさくなく耳心地の良い音色…これぞ自然のBGM。

 お風呂は1人ずつ交代で入る貸切タイプ。入口も味があって良い

 こちらが浴室内。家庭のお風呂よりひとまわりくらい広い。しかもタイル張りのお風呂、懐かし〜〜〜!
 バスタブが床より深いのも、昔のお風呂特有だよね。まさに私のおばあちゃん家と同じでセンチメンタルな気分になる……

 あと入る時は気づかなかったが、脱衣所にあったコレ。もしや……“シュポシュポするヤツ”……!?
おばあちゃん家のお風呂にいた、竹製の、“あのシュポシュポするヤツ”なのか………!?

 エモすぎて涙ちょちょ切れるよ…。

 館内にはこんな感じで共用の洗面所があって、ここで歯磨きやら洗顔をさせてもらった。古さはあるものの、清潔なので気持ちよく使うことができた。

 ちなみに洗面所に限らず、ここ山根旅館では客室からお風呂からトイレから隅々までキレイに清掃されているようで、やや潔癖気味の私でも安心して過ごすことができた。(ここ重要!

 その後、部屋で文豪ごっこをするなどして昭和レトロな空間を思う存分満喫。

 良い時間になったのでそろそろ横になろうかとベッドに向かうと、

 枕の影からちゃっかりイヴ・サンローランが。
 コスメやファッションに留まらずまさか寝具にまで進出していたとは、恐るべしサンローラン。
 ちなみにベッドはこれでもかってくらいふかふかの低反発。干したての太陽の匂いがして、めちゃくちゃ気持ちよかった〜〜

翌朝

 ふかふかのベッドに一生うずくまっていたい気持ちを堪えなんとか起床。昨夜は暗くて館内がよく見えなかったので、チェックアウト前にちょっくら探索してみようと思う。

 ノスタルジーの中にある生活感……良い。

 廊下から見える景色の開放感……良い。

 どの部屋もまさに文豪が泊まっていそうな趣……良い。

 ホラーゲームに出てきそうな雰囲気……良い。

 結論…………めちゃくちゃ良い。

 退廃的な美しさに感動し写真をバシャバシャ撮るも、私の頭の中はずっと「怖い!けど美しい!けどやっぱり怖い!」の繰り返しで忙しかった。怖さと美しさって紙一重なんだな。

 チェックアウトの際には、昨夜撮れなかった玄関をパシャリ。

 絵に描いたような「大きなのっぽの古時計」もあった。(写真左)

 あっ、ちなみに帰りはスーツケースを運ぶのを手伝ってもらえた。昨夜の息を切らした私の様子を見て悟ってくれたのだろうか。同じ男性スタッフさんが1人で対応されているようで、忙しいにもかかわらず感じの良い応対をしてもらい大満足。感謝カンゲキ雨嵐である。

 値段が安いだけに心配であったが、きちんと清掃が行き届いていて、施設を大切にされているんだなぁという心意気が伝わってきた。「廃墟好きな人」、「昭和レトロ好きな人」はもちろん、宿代を抑えたい女性の一人旅にもぜひおすすめしたい。

 何より私はこの宿のファンになってしまった。また泊まりたい。

 
 ちなみに駅までの道中の寂れ具合も……良い。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。