秋といえば、食欲の秋、芸術の秋、睡眠の秋、読書の秋………等いろいろあるが、なかでもわたしは「散歩の秋」がもっと世間に認知されていいと思っている。
秋は暑くもなく寒くもない、散歩には快適すぎる気候だからだ。春とは違って花粉に悩まされることもない。
これはもう散歩するほか選択肢がない。
というわけで私は、散歩をするためだけに電車に飛び乗ったのであった——
はじめに
ルール説明!
一, 降りたことのない駅で降りる
二, マップアプリ等の地図は禁止
三, お金はなるべく使わない
※ただただ無職が知らない駅をフラつく企画です。
それではどうぞ。
着いた

電車に揺られること数十分、

東急東横線、「武蔵小杉」で降りてみた。
もちろん降りたのは初めて。名前はよく耳にするが、実際にどんなところなのかは知らない。なんとなく「お金持ちが住んでいそう」「サラリーマンがたくさんいそう」というイメージはあるが…

早速ホームに降りると、至るところにテレビモニターがついていた。すげえ、こんなの見たことないよ…
電車を待っている時ですら娯楽が用意されているとは、武蔵小杉の人間はヒマな時間があると発狂してしまうのかもしれない。

改札を出ると、中央口1、中央口2、中央口3、という、全くもって中央という言葉が活かされていない表示に惑わされた。

しかし私は見逃さなかった。中央口2に記載された「グランツリー」という字面を。とてつもなくバカでかい木でもあるのか???
気になったので行って確かめてみるしかない。

中央口2を出ると、そこに現れたのはタワマン、タワマン、タワマン。タワマンをみるだけで興奮してしまう私はやはり田舎者なのだなとつくづく思う。
ふと我に帰ると、グランツリーの案内板がないことに気づいた。参った。これではどこにグランツリーがあるのかわからない。

まさかこの並木のことじゃないよな…いやまさかな…と思いながらも先に進んでみる。

全然違った。
商業施設かーい。サクッと中を覗いてみたが、木の要素がそれほど感じられるわけでもなかった。

歩き続けると、またしても至るところにタワマンが立ちはだかる。

近づいてみると、何やらタワマンの住民専用のトンネルがあるではないか。
せっかくなのでお邪魔させていただく。

青い空、生い茂る緑、憩う住民、恐ろしいほどにすべてが秩序正しく揃っているこの光景、どこかで見たような……
あっっ、完成予想図で見るイラストだ(伝われ)
一見絵に描いたような楽園がそこに広がっているように見えるが、その実情は階層でマウントを取り合うようなギスギスしたものに違いない。
わたしはタワマンの闇に震え、そっと敷地を後にした。
駅の反対側へ

どこへ行っても似たような景色ばかりで飽きてきた田舎者が1日に見ることができるタワマンの許容量が超えてしまうので、駅の反対側へ行ってみる。

駅に戻る途中、変わり果てた姿のダイエーを発見した。
「フーディウム ダイエー」というらしい。フーディンの進化系かしら。

反対側にも相変わらずタワマンはあるが、先ほどより少ない。こちらは商店街などもあり、かろうじて昔懐かしさは残っていた。

よくみると旗がユニフォーム型になってたりしてかわいい。

一角にあったこちらの居酒屋……

世にも珍しい、「2軒目専門店」である。
面倒な酔っ払い客を快く受け入れてくれるマスターの包容力よ…

商店街には「馬肉の無人販売所」があった。夜中にふと馬肉が食べたくなってもすぐに手に入るので安心〜。じゃねえんだわ!よりによってなんで馬肉なんだよ!

気づけば住宅街まで歩いてきてしまっていた。
ふと通りかかったアパートの方から、何者かの視線を感じた。

こいつだった。
……え?この看板なに???

このシュールな看板が「川崎市」によって設置されていることが何より闇深い…
ゴミ捨て場の前に貼ってある状況からして「キレイにしてね」的なメッセージなんだろうけど、いくらなんでも行間読ませすぎだろ!!!!!!通行人ビビらすのやめろ!!!!!!!
訳もなく知らない住宅街に入ったのも、今思えば全部コイツに導かれていただけなのかもしれない。すべてはコイツの手のひらで踊らされていただけなのかもしれない。
ゾッとしたので今日はこの辺にしておきます。
ありがとうございました。