先日、帰省したついでに『志摩スペイン村』に行ってきた。名のとおりスペインを疑似体験できる、三重を代表する歴としたテーマパークだ。
わたし含む三重県民は物心つく前からテレビCM、駅構内などの至るところで「エスパァァァァァァァ〜!ニャァァァァァァァァァ〜〜〜!太陽〜とォォ歌〜をォォォォォもォォォォとめェェェェェェェてェェェェェェェェェェェェェェェェェェ〜!♪」という志摩スペイン村テーマソングを聴いて育つため細胞レベルでそのメロディが身体に染み付いている
が、その割に客足は年々減っており、ついには公式自らが「待ち時間ほぼゼロ!」「空いてるから映え写真が撮り放題!」と自虐プロモーションに躍り出る始末。あまりの開き直りっぷりにネットでも話題となり、若者のあいだで人気復活の兆しを見せているとかいないとか。
…ものは言いようですな

さて、今回はそんな『志摩スペイン村』にひとりで突撃。ちなみに6歳のころ祖父母と一度訪れているものの、ぼんやりとした記憶しか残っていない。久しぶりの志摩スペイン村、いろんな意味で胸が高鳴る。
地方のテーマパークをひとりウロウロするのは盛大に浮いてしまうような気がするが、幸いにもこの日は正月真っ只中。おそらく新年早々、検索エンジンの予測ワードに「なぜ潰れない」と出てくるようなテーマパークに来ている物好きも少ないはずである。人目を気にせずゆっくり楽しめるはずだ
……と、思ったのが大間違い

結構人おるやんけ〜〜〜〜〜〜
(正月だぞ????正月にスペイン村行くか普通???????そんなんできひんやん普通……正月にわざわざ「よし、志摩スペイン村行くか」ってならんやん普通………え、ムリ帰りたい…………帰りてぇ……………ぼっちつれぇ…………………………帰ろうかな………ねえ、帰っていい?????いいよね????????)
いや待てよ
冷静に考えればこの日の開園は10時。現在の時刻は10:40。タイミング的にたまたま今が最も混み合う時間帯なのかもしれない。落ち着け私

……友達・カップル・家族連れに揉まれながらやっとの思いで手に入れた入園チケットを握りしめ、いざ入場。
ちなみにチケットの待ち時間は5分だった。5分しか並んでいないのにめちゃくちゃ並んだ気がする自分の感覚が心底怖い。あと1分でも遅ければ私のぼっち耐性は限界を迎え、その場で身体ごとバーストしていたことだろう。考えただけでもゾッとする

しかしここまで来てしまえばあとはこっちのもの。人間はテーマパークに来ると特有の高揚感に操られ、周りにいるぼっち客の存在が「無」になる。つまり私の存在は他人からすれば見えていないに等しいのだ。正直なところ、今日という1日を存分に楽しむにはそう思わないとやっていられない。ある種の洗脳だ

これが園内マップ。
エントランスから入るとまず『エスパーニャ通り』なるアーケード街を通る
アーケードを抜けた先の景色は………
……….……

……スペイン。スペイン行ったことないけどここは多分もうスペイン。ここがスペインでないなら逆に何処がスペインなのか聞きたい。いや、100歩譲って確実にヨーロッパではある。日本人の想像をドンピシャで具現化したヨーロッパ。ヨーロピアン。ヨーロピアンシュガーコーン…それほどまでにテーマパークの域を超越している。あまりに高明な景観にジャパニーズピープルは息を呑んで立ち尽くすことしかできない

広場には座り込んで「なにかを待機している」と思しき人たちがいた
某ディズニーランドなどではファンがショーやパレードの場所取りをするのを「地蔵」(お地蔵さんのようにジッと座って待つから)と呼ぶらしいが、まさかスペイン村にもその類の現象があるのか?

……気になるのでアーケード街で買ったチュロスを食べながら私も「地蔵」してみることに。
このチュロス、なぜか2本付いてきて税込440円、コスパが限界突破していた。サクサクほくほくふわっと鼻に抜けるシナモンの香り、とても美味しゅうござんした
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さて、待つことおよそ30分。気づけばまわりに人がわんさか集まっていた。この人の多さたるや…ここはもう私が知っている志摩スペイン村ではない。もはやディズニーやユニバのソレ。誰が辺境の地にある経営難のテーマパークだと気づくだろうか

軽快な音楽にノり、突如ネコ、イヌ、ネズミたちが視界に飛び込んできた。キャラクターショーが始まったらしい。「地蔵」のかいあって前から2列目のほぼ真ん中という特等席で鑑賞することができた。
キャラクターたちが簡単な自己紹介を済ませると、「クイズ大会」が始まった。司会のお姉さんが繰り出すクイズに、わかった人は挙手制で答えるという大変アットホームな形式だ

待ってましたと言わんばかりに「はい!はい!」と連呼するちびっ子たち。すげえ。クイズに賭けるモチベが違う。会場のボルテージが一気に上がったのを肌で感じた
何が一番すごいって、出題される問題がそこそこ難しいこと。キャラクターについてのクイズなのだが、古参ファンじゃないとマジでわからない。実際わたしは何が何だかさっぱりわからなかった
クイズが終わると、4匹のキャラクターによるダンスバトル

これまた会場にいる客に挙手を煽り、多数決で優勝者を決めるらしい




各々、一生懸命ダンスでアピールしている
く…かわいい………

優勝は唯一の女の子キャラ、ダルネシアだった。私もダルネシアに挙手したうちの1人だが、内心そりゃまぁそうなるわな、と。彼女は唯一の女の子キャラに加え、他のキャラと比べて「圧倒的な華」がある。この大きなハンデを覆す日は果たして来るのだろうか…
最後はみんな仲良く音楽にノッて手を叩く参加型のコーナー。ひとりで来ている傍らこういうことはできるだけ避けたい派なのだが、気づけば脳みそ空っぽにしてノリノリで手を叩いていた自分が怖い。終わる頃には「そうさスッペッインがだッいッすき〜〜〜〜〜♪」のメロディが頭から離れなくなっていた

ショーが終わると、近くにこれまたショーを観覧できる『カンブロン劇場』を見つけた。先ほどとは一変、こちらはガチのフラメンコが観れる大人向けのショーらしい。せっかくなのでこれも観ることに

ショーまでの時間つぶしに、辺りを散策した。
先ほどの広場にあった建物、門を潜れるみたいなので入ってみる

ひっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっろ

奥まで行くと、さらにその奥のゾーンへ通り抜けできるらしい。なにこの景色……絵?
門をくぐり抜けると、

む き 出 し の 大 自 然
えっと、あまりに突然でよくわからないんですけど、だだっ広い、広々とした、広大な、どこまでも広がる、果てしない、雄大な自然が目の前にいきなり現れました
しかもこれも全部スペイン村の敷地らしい。敷地面積バグってない?????????

地図で言うと☆マークが今いる場所、赤線より上側が今見えている景色である
赤線を隔てて上半分、すなわちスペイン村のおよそ半分に及ぶ範囲が「めちゃくちゃ自然の中にある」ということである。なんということだ

時間になったためフラメンコ劇場に戻ってきた。
とりあえずキャラクターショーの「そうさスッペッインがだッいッすき〜〜〜〜〜♪」のメロディを思い出し、どうにかこうにか気持ちをリセット

劇場に入った。「大きめの映画館」という感じで、写真では伝わりづらいがモニターのサイズは映画館と比べるとめちゃくちゃデカい
その後、約25分間にわたるフラメンコショー『クラシコス・ザ・フィルム』がスタート。「スペイン人と思しき美男美女6人が、ひたすら激しいフラメンコを踊り続ける」というもはや狂気のような芸術作品が上映された。画面が大きいだけに、その迫力はおそらく実物で観る以上に凄まじい
フラメンコ初心者の私は僭越ながらフラメンコに対して「とりあえず衣装をフワフワヒラヒラさせて踊ればいいんでしょ」的な大変ナメくさった印象しかなかったのだが、そのイメージは180度覆った。
フラメンコはとんでもない脚力、体力、リズム感覚、協調性を要する「スポーツ」だったのだ。

劇場に入る前に見かけたこのプリクラ機からは微塵も想像できない「ガチさ」だった
こういうものは経験した人にしかその凄さがわかり得ないものだが、凡人である私でもさすがにこれは「凄いものを観ている気がする…………」と唖然。25分間ぶっとおしで踊り続けるダンサーさんたちの迫真のダンスと演技に目が釘付けになった。
“ホンモノを観た”という充足感に満たされながら劇場を後にする。

さて、再び『むき出しの大自然ゾーン』に舞い戻ってきた。この厳かな門を越え、これから新たなエリアに突入していく……
続きは後編で