自虐ネタで話題の『志摩スペイン村』に女ひとりで潜入してきた〜後編〜


前回に引きつづき、志摩スペイン村に来ている。





厳か(おごそか)という言葉では形容し難いほどに重厚な門を潜り、サンタクルス通り方面、別名『むき出しの自然ゾーン』へ突入…………






門の先にはスペインの田舎を再現したかのような、ただただのどかな風景が広がっていた。青い空、風でそよそよと揺れる花、遠くに望む山々に

「アレ、もしかして私、死んだ?」

と思わずにはいられない。天国か、あるいは徳を積んだ人だけがたどり着ける楽園かなにか。まだ死にたくはないが、万が一死んでもこの景色を見れば生前の未練を一瞬にして消し去り、潔く全てを受け入れられそうな、そんな場所。死んだらここに骨を埋めたい。人生の成功者だけが行き着く境地。全人類の理想郷。天国という概念、そのもの







よく見ると、地面にはおびただしい数の石が埋め込まれている。


「角がなくて細長い石」という水切りに使われるためだけに生まれてきたような石が、テーマパークの景観を構成する大切な一部分になっているのだ。石側もさぞかし戸惑っていることだろう







さらに奥へと進むと、スペインの街並みがそっくりそのまま再現されているゾーンにやってきた。


スペインに行ったこともなければスペインの田舎にも行ったことがないが、確実にここは「スペインのどこかしらに実在する人里離れた村」である。



今にもその角からミルクの入ったバケツを抱え、エプロン姿の中肉女性が出て来る気がしてならない。彼女は私の帰りを待ち望んで、家畜の搾りたてミルクで作ったシチューとパンを用意してくr……








再現性の高さにとどまらず、若者の需要にもしっかり応えている。見よ、この映えスポットの数々を。時代の流れに対応する柔軟性が、今年で開園29年目のソレじゃない



それでいて公式が言っていた通り、マジで「人の写り込みなし」で「映え写真が撮り放題」状態である。こんなことがまかり通っていいんですか?


映えスポットで度々見かける、“インスタグラマー彼女”と“それを涙ぐましい愛と労力で支える写真係の彼氏”の撮影会も思う存分はかどりそうだ










さらに奥のエリアに足を踏み入れると、海賊船が姿を現した。その名も『ガリオン船アルナ号』。


これまでのリアルなスペインの街並みから一転、急にファンタジー要素が顔を覗かせてきたことで、自分が今いるのはスペインではなくテーマパークであることを思い出す…



と同時に、やはりテーマパークに来たからには「アトラクションを避けては通れない」という今更ながら核心的な事実に気づいてしまった。







というわけで並んだ。これに。『ドンキホーテ 冒険の旅』に。



大してよく見ずに並んでしまったため、乗り場を目の前にしてようやく、このアトラクションがどちらかと言えばかなり子供向けの乗り物であることがわかった。


ミスった…と思ったが今さら後には引き返せない

ちびっ子に続いて突如大人の私が「ひとりです」と言っても動じないスタッフさんは流石のプロ。私なら「うっわコイツまじか」的な本音が露骨に顔に出てしまう気がしてならない。不幸中の幸い、乗り物には私ひとりで案内された


ひとまずiPhoneのメモに、乗った直後の鮮度バツグンな感想をしたためる













らしいです

画が浮かぶような素晴らしいレビューですね




誤解を招かないよう付け加えると、スプラッシュマウンテンは落下する前までの“陽気なほのぼのゾーン”のことを指しており、決して急降下したり、ずぶ濡れになるわけではない

キャラクターたちが陽気な歌にノり、踊り狂う、あの雰囲気。いたって平和。平和オブ平和。平和すぎてそれこそスプラッシュマウンテンやジュラシックパークのような「これでもかと安心させておいて、オチで絶望の淵に叩きのめす戦法」かと思わせるくらいには平和。



『ドンキホーテ 冒険の旅』、ただの子供が喜ぶエッセンスをふんだんに詰め込んだ、壮大なスペクタル・ファンタジーでした












一度アトラクションに乗ってしまうと緊張の糸が解けたのか、他のにも乗ってみたくなった。せっかくなので勢いに任せて『フェリスクルーズ』にも並ぶ。


『ドンキホーテ 冒険の旅』が“ファンタジー”なら、コチラは“ガチ”の水上ボートだ








写真の『フェリス島』の周りをグルッと1周する、またしても平和なアトラクション。


乗船前、スタッフが「風向きによっては水に濡れる可能性があります」と言っていたが、一向に濡れる気配がない。まぁご時世的にこういうのは念の為ってことか……ン?











ジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボ……







ザババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババ……







ボートの動線上に突如「どう考えてもずぶ濡れになるゾーン」が出現。鬼畜か?完全に終わった。死。death。ご愁傷様でした。お骨は冒頭の楽園(サンタクルス通り)にでも埋葬してください…



………と、思いきやボートが通過する直前で水はピタリと止まった。よかった。なんなんだこのプレイ
















その後、『太陽の洞窟』なる屋内エスカレーターで、標高の高い位置へワープ。未だかつてこんな神秘的な移動手段が存在しただろうか、いやない




エスカレーターを登り切るとそこに現れたのは、








デっけえ城







中は博物館になっていて、これまたデッけえ銅像や、





“あの”フランシスコ・ザビエル来日の歴史、






カナヅチを握って何かをしようとする初老の男、






険しい形相で機織り機を使いこなす男、





天井絵の「馬」、などなど、大変興味深いものが散見された。




すみません、本当はもっと歴史的に凄いものが展示されていたと思うんですが、何せ博物館・美術館等の「展示物をジッと観て周る」系の娯楽が得意でないもので………

ギネスレベルの速さで集中力を切らし、10分足らずで城を後にしました




ちなみになぜザビエル?と思ったら、この城はザビエルが誕生した地・ナバラ王国『ハビエル城』を模して作られていたらしい。早く気づけよ。






あとこれ、一瞬「イクジナシ」に見えるよな………
















さて、「大人ならではのテーマパークの楽しみ」と言えば、“アレ”である。



民に潤いとシアワセを与えし、旨し水………


「酒」。



レストラン『アルハンブラ』にて、スペインビールと生ハム食べ比べのセットを注文





“アルコール分5%以上”というやんわりとした表記に、「自分はこれから何にでもなれる」という未知数の可能性を感じる………………………


スペインビールというのは初めて飲んだが、これまた美味しい。何がどう美味しいかは説明できないが、「美味しい」ということは確か。「これはスペインのビールなんだ」というある種の先入観による美味しさなのかもしれないが、もはやそんなことも美味しければどうだっていい。スペイン(村)で飲む、スペインのビール、美味しくないわけがない

そんでもって生ハム。右端から順番に食べてみたが、左に行くにつれスモーク感が増していく。となるとこれは『生ハムの食べ比べ』というより『スモーク、スモーカー、スモーケストの三点盛り』と言った方が正しいのかもしれない。ビールが進むいいつまみだった















ほろ酔いで向かった先は『スチームコースター アイアンブル』。屋内型のジェットコースターだ。15分待ちで、この日1番並んだ


15分しか並んでいないのに「長い」と感じてしまうのはもはや病気だ。『スペイン村症候群』とでも名付けた方がいいだろう。首尾よくスペイン村症候群に侵された私は、15分間の死闘の末、乗り物に案内されたのである






さて、このアイアンブル、暗闇の中を駆けめぐる点においてはTDLの某人気ジェットコースターに似た造りだったのだが、なんと中盤に前代未聞の展開が待ち受けていた。乗り物が、コース上で一度停止するのである


「終わったかと思わせて、まだある」を、ジェットコースターでやってのけたのだ。


乗客は予想だにしない禁じ手を繰り出され、完全に不意をつかれる形となった。と同時に、私は微量のアルコールとジェットコースターの相乗効果によって、完全に“キマった”













続いてやってきたのは『ピレネー』。由来はスペインの「ピレネー山脈」という曲がりくねった地層が特徴の山脈らしい

正直さきほどのアイアンブルは準備体操に過ぎず、大人ならコチラにも乗っておくべきだろう。スペイン村随一の絶叫系。これぞ、見るからに、すべからく、絶叫系である




意外にも並び始めて3分足らずで順番が回ってきた





横4シート、縦8列のコースターに、私は5列目、カップルと1つ席を挟んで同じ列に案内された。


これがシラフであればいっそ消えてなくなりたいと懇願するだろうが、アルコールで合法的に“勝利”した人間にとって、そんなことはもはや取るに足らない些細なアクシデント

カップルにしてみれば「自分たちの席を1つ挟んでとなりに成人女性が1人で座っている」という状況は邪魔でしかないか、あるいは(この女、自分たちにしか見えてないんじゃ…)という本来の目的外での恐怖があったやもしれぬが、どちらにせよ私にとっては丸っきり無問題、ノープロブレムなのである






行ってらっしゃーいの文句を合図に動き出す車体




「こわ〜い♡」「ヤバ、めっちゃ登んじゃん」「待ってもうムリ降りた〜い♡」「ヤベエ高い高い高い」「え、ムリ死ぬ〜〜〜〜〜♡」「手挙げようぜ」「え、手挙げるとかムリなんだけど〜♡」「大丈夫だって」「ヤダヤぎゃゃゃゃゃゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああ





隣のカップルをはじめ、あちこちから響きわたる絶叫。もはや私も我慢する理由はないので、容赦なく叫んだ



時空が歪んだか天変地異でも起きたのではと錯覚するほど幾度となくスピンを繰り返し、身体がようやく慣れ始めたと思えば、最後にしっかり急降下させてくる。

『ピレネー』、回転の怖さと、落下の怖さ、その両面から乗客を追いつめる、血も涙もない鬼畜コースターだった







その後、アルコール×絶叫系で脳内麻薬がダバダバ放出された結果さらにハイになった私は、ピレネーにもう一度乗車




ひととおり満足すると、今度は『フィエスタトレイン』という園内をゆっくり周遊する汽車に乗り込んだ。





スタッフさんが「途中に動物たちがいるので探してみてください」と言うので一生懸命探すも






ゴミのような写真しか撮れず。無念である













閉園まで少し時間があるため、小腹を膨らまそうとアーケード街に戻った。



戻ったのだが、









誰なんだお前は………


得体の知れないキャラと、得体の知れないキャラと一緒に記念写真を収めようとする10数人が列を成している。きっと彼らの半数以上はその名を知らないまま、「得体の知れないキャラ」としてその存在を記憶するのだろう。もしくは陽気なスパニッシュ蛙

スペイン村か〜10年前に行ったな〜なんか帰りがけに陽気なスパニッシュ蛙と写真撮ったんだけどあいつマジ誰だったんだろ、となるのだ。切ない









気を取り直し『ピザ ラ ロハ』にて「シュリンプピザ」を注文。期間限定らしい。

一口食べてみると、うっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっんまい、え?待ってこれ、美味すぎぃ………


その美味さをフォントサイズで表すとするなら、これくらい美味い。


注文後5分程待っただけあって、焼きたて熱々。オマールソースが濃厚チーズと合わさることでベースが“完成”されている。極めつけに具材一つ一つが大きく、特に海老がヤバい。プリップリ。「ちょっと高めの回転寿司の海老」のソレ。つまり完成されたベースの上に完成された具材が乗っかり、完成されたピザが完成してしまっているのだ

Oh Jesus…この出会いに感謝……












その後、閉園間際にプロジェクションマッピングを観賞。




スペイン村をほぼ開演から閉園までみっちり満喫し、帰路に着いたのであった——



















帰宅後、「陽気なスパニッシュ蛙」が頭から離れず、気になったのでググッてみた。









志摩スペイン村公式HPより





フリ……オラ……ニャーナ……………



………………………




………………













いや名前ムズ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




終わりです。志摩スペイン村、楽しいのでぜひ行ってみてください

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