青春18きっぷでの旅の途中、わたしは大阪・西成区にやってきていた。
なぜか?ズバリそれは、「日本で最も治安が悪い」との呼び声も高い、大阪のドヤ街(※)・あいりん地区があるからである。
※ドヤとは、宿(ヤド)を逆さにした言葉。簡易宿所が多く立ち並ぶ街のことを指し、主に日雇い労働者が寝泊まりする場所として栄えた。劣悪な労働環境によって暴動が盛んに行われたり、過去に犯罪歴のある“ワケあり”の人間も多く住みついており、その治安の悪さから「日本のスラム街」とも比喩される。
あいりん地区へ興味本位で男と行ったことがあるという友人Aは、「あそこは女ひとりで行くもんじゃあない」と悟ったような口振りで話していた。
……気になる。ものすごく気になる。
ダメと言われればなおさら行きたくなる、私はそういう性なのだ。

というわけで今回は無職さんぽ・番外編。
※危ない街で迷子にはなりたくないので、今回は例外でマップアプリを使用させていただきます。
ではどうぞ。
最寄り駅に到着

あいりん地区の最寄り、新今宮(しんいまみや)駅に到着しました。
さぞかし降りた瞬間に「ヤバい気配」を感じるのだろうと身構えていたのですが、新今宮で降りる人、割といてびっくり。

後に気づいたのですが新今宮駅はあの通天閣からもほど近いらしいです。いや、そんな大阪を代表する観光地と日本一治安の悪い街が近距離にあってええんか??

……地上に出るととにかく自転車が多いのと、道の端に積み上げられた大量のゴミ袋が気になります。が、人が密集するここ大阪では特に変わったことではないのかもしれません。
と、思ったのも束の間。
駅から歩くことほんの2、3分くらいの間に、
・独り言をブツブツ唱えるオッチャン×1
・今どきめずらしく道端で痰を吐く青年×1
・ハイレグなのか?ってくらい丈の短いズボン履いたオッチャン×1
にすれ違うという癖のトリプルコンボが繰り出されてしまいました。いや、この街の人たちのスルースキルすげえな。

看板のメッセージも急に意味深に思われて、なんだか不吉な予感が立ち込めてきます……
あいりん地区へ突撃

ここから、いわゆる“ドヤ街”とされるピンク線で囲ったエリアに突入していきます。

歩いていてまず感じるのは(というか嫌でも目に入るのは) 、道の至るところにオッチャンがいるということですかね。
いや、むしろ「オッチャンしかいない」と言った方が正しいかもしれません。
彼らは道のガードレールにもたれかかって仲間と談笑していたり、地べたに寝そべっていたりと各々の過ごし方をなさっています。なんかけっこー楽しそう。

ふと、見慣れない言葉が目に入りました。
「無料住宅、夢みてーな四字熟語だな…」

気になって脇の掲示板を見てみると、「せいかつそうごうあんないじょ」と書いてあります。日雇いのお仕事を案内してくれたり、住む場所の相談にも乗ってもらえるらしい。
こりゃあ助かる。

注意書きが多いのもあいりん地区の特徴。
こんなに言われると逆に捨てたくなってしまうのでは…とも思ったり。
なんだかんだで意外とイケるんじゃね?と思い始めていたものの、ここから空気が一変。



……おほ〜〜こりゃすげえ
ただならぬ場所に足を踏み入れてしまった感がハンパない。あまりの非日常感にポカーンとしてしまいます。

しかもすぐ向かいには西成の労働福祉センターがあって、そのコントラストがなんとも切ない。

さらに奥へと進むと、建物の壁にはこんな文字が。
これも暴動の一種なのでしょうか。「欲しいの、憩いの場なんだ」と思うとちょっとかわいいな


あいりん地区の名物でもある自販機を見つけました。
1本50円て破格すぎません?フツーの自販機が高く思えてきますね。

道端には補強したにも関わらず、ぽっきり折れてしまっているポール。ここで何があったのだろう、と妄想が膨らむ一枚です。

切実な注意書き。

地べたに座り込んで談笑するオッチャンたち。良い光景だ。

結構な頻度で見るこういった張り紙。食事、寝る場所、お風呂をタダで提供してくれるらしい。なんてやさしい世界…
商店街へやってきた

あいりん地区内に商店街がありました。
無類の商店街大好き芸人としてこれはスルーできません。行ってみます。

入ってすぐ、おそらくあいりん地区の中で1番綺麗なお店を見つけてしまいました。
こういう小綺麗なところもあるのだなぁとホッとしていると、

…不意打ちを喰らいました。
未だかつてこんなにも堂々と治安の悪さを訴える看板があっただろうか??

さらにその下にはいろいろな張り紙が。

男の美学、かっけえ〜〜〜
地味にその右の「コロナに負けへんで」も好き。

さらに昔ながらの売店を見つけました。
1本50円で飲料が売られている街の物価は果たして……
……………

ハーゲンダッツ310円。フツーにまぁまぁするやん。なんならうちの近所のダイエーとかのが安いぞ。

……さらにしばらく歩くと、商店街には“カラオケ居酒屋”がめちゃくちゃ多いということにも気づきました。(写真のところは5軒も連なっていた)
横を通りかかるとお店から歌声が漏れてくるのですが、みんな盛り上がっていて楽しそう。
ちなみに選曲は「ひまわりの約束」。オッチャン意外とミーハーでかわいいかよ。

道の脇には思わず「現代アートか?」となってしまう放置されたスーパーのカートが。
意図せず無造作に置かれた傘が芸術性たかいです。

商店街の終わりがけには、大阪を代表する激安スーパー「スーパー玉出」がありました。

せっかくなので中を覗いてみたのですが、もはや
酒のエレクトリカルパレード状態。
まちがいなくアル中の人が死ぬ間際の走馬灯で見るソレでした…。
周辺をブラつく
商店街を引き返していると、ふとパチンコの壁にある看板に目を奪われました。

“トイレ大開放中”だそうです。いやすげーな。

地味にその横に書いてある「西成取扱説明書」も気になる。
…………

もらってきました。
記念にね。
ちなみにこのとき生まれて初めてパチンコに入ったのですが、ガヤガヤした店内で「パンフレット貰えますか?」と伝えるのは至難の技でした。

中身は西成のオッチャンによるおすすめの飲食店特集。手作り感があってなかなか良いです。

その後、何やらオッチャンがいっぱい集まっている場所があったので行ってみました。
後から知ったのですがここ、あいりん地区を代表する憩いのスポット、「三角公園」という場所みたいですね。
何も知らずに突っ込んでいったら、密集するオッチャンたちの視線がすごくてさすがに「あ、ヤベえ」となりました。
談笑してる人たちもいれば、ただ座ってボーっとしてる人もいる。
みんな何かしら人には言えない過去を抱えているからなのでしょうか、ナゾの一体感があって、その様はまるで“洋画に出てくる刑務所内”のようでした。
あまりに場違いなので、フラッと通り過ぎるくらいにして引き返します。

ちなみに公園の周りにはこんな感じで寝そべっているオッチャンが5メートル感覚でいました。マジで。ここ日本だっけ?
西成を歩いた感想
…とまぁここまで1時間半くらいあいりん地区とその周辺を歩いてみたわけですが、思ったより治安は良いなと感じました。
女ひとりという物珍しさからか視線は感じますが、さすがに危害が加えられることはなかったです。なんならオッチャンが多い分、人目もあるので逆に安心。
何より現代人が忘れてしまったような人情というか、心の温かさみたいなものに感化されて、あやうくもう少しで西成のオッチャンに話しかけてしまいそうでした。人見知りなのに。
そのくらい素敵な街に思えました。
しかし今回は運が良かっただけに過ぎないかもしれないので、行く方はくれぐれも住民の方に配慮しながら歩きましょうね。
おまけ:西成で見つけたいろいろ
まだまだ貴重な(?)写真がたくさんあるので、貼っておきます。

帰りがけに見つけた鉄壁のガードに守られる警察署。決して要塞ではありません。

激安のホテル。
自分で冷蔵庫を持ってくるというのがちょっとよくわからない。

大阪にしては事故物件なみに安いであろう物件。

道端で売られていた缶コーヒー。相変わらず飲み物は安い。

日本一治安の悪そうな駅。

コンビニの上にあるパロディの度を超えたお店。

新世界にて見つけたありがたいお言葉。これはガチ、知らんけど。