ルール説明
※より企画っぽくなるようにルールを設けていますが読んでも読まなくてもその後にあまり影響しません
①「降りたことのない駅」で降りる
② 地図を見ない
③ お金を使わない(なるべく)
こんだけ。無職が知らない駅をフラフラするだけの企画です。それではどうぞ
駅に到着

今回は京急本線にて、『梅屋敷』(うめやしき)にやってきた。
東京についての知識は乏しいものの、奇跡的に浅草の『花やしき』という遊園地の存在を知っていた私は、この駅名がどうしても気になってしまった。
もしかすると私が無知なだけで、梅屋敷にも遊園地的なスポットがあるのではないだろうか、そんなことを考えずにはいられないし、もし無いとしても駅名からそこはかとなく漂う「下町っぽさ」に期待が膨らむ。

……これが梅屋敷駅のホームだ。お世辞にも人が多いとは言えない。というかほぼいない。
この時点で早々に「花やしき的な遊園地があるのではないか」という期待は薄れた。
というかもし遊園地があったとして、無職の女がひとりでアトラクションを楽しんでいる絵面はなかなか心にくるものがあるのでむしろ助かった。ここはやはり「下町っぽさ」に望みを全ベットしたい。


……うん。それしかない。

さて、改札を出てみたが、高架下ということもあってか駅前特有のにぎやかさはあまりない。

唯一あるのは、昔ながらの婦人服屋。
………っぽい。ぽいぞ。

そんでもって、駅前とは思えぬこの壁の廃れ具合。
……これもぽい。ぽいぞ。

とどめに、『梅屋敷』と書かれたゲート。
ああああああああ………これはもう………………絵に描いたようなSHITAMACHIですやん…………こんなのもう『下町ロケット』のロケ地ですやん……………観たことないけど絶対そうですやん……………………

狙いどおり賭けに勝ったわたしはご機嫌で、まずは東側にあった『梅屋敷東通』を歩いてみることに。
するとさっそく、

看板が真っ黒くろすけの焼き鳥屋や、

ほぼほぼ『アパマンショッ◯』な不動産屋、

ギリギリを攻めたネーミングの八百屋などなど…香ばしさ漂うスポットがわちゃわちゃしていた。下町はこうでなくっちゃね


自販機の横には「大量の空オロナミンC」があった。誰かが毎日ここに1本ずつ立てているのであれば逆に律儀な気もしてくる。……気がするだけ。

また、しばらく歩くと木の幹のごとく枝分かれする道に遭遇。
それによく見るとこのT字路……

もう『ト』じゃん!
T字路じゃなくて『ト字路』じゃん!
……いやあ、良いト字路だなあ。ト字路って声に出すともうほぼ豚汁(とんじる)だなあ。ちょうど寒いから身体に沁みるなあ。助かるなあ

「ト字路で暖をとる」というありそうでないことわざのような行動に出たのも束の間、今度はおどろおどろしいツタを見つけた。これが自然に出来たものだと思うと……あれれ、なんだか寒気がするなあ

このままでは寒暖差で風邪をひきそうなので、自らの判断で「ほっこりするもの」を摂取することに。
昔ながらのパン屋に、

昔ながらの書道教室。
街の人から長く愛され受け継がれてきたであろう歴史が、私の身体を芯まで温めてくれる……
小道へ

さて、ひととおり商店街を見終えた私は、例によって小道へ繰り出した。
ちなみにこの辺りで下校途中の小学生が、「ランドセル家に置いたら〇〇公園集合な!」と言っていてとても良かった。私も元気よく「了解!」と言い放てば純朴な小学生に快く混ぜてもらえたのではないだろうかと今更ながら後悔している。

……小道を歩いていると、良い「ドアの取っ手」を見つけた。磁石のようなフォルムのソレは、磁石のごとく私を惹きつけてしまったのだ。この運命的な出会いに私の脳内では『Love so sweet』が鳴り響く。光ってもっと最高のLady…

続いて、輝いたのは鏡でも太陽でもない。蛇口だ。
ひねる部分を取り外され、下にあったであろう囲いも今は姿を消し、役目を奪われてもなお、そこに姿をとどめたままの蛇口。なんとも哀愁が漂っていて切ない。
これをきっかけに知ったのだが、こういう実用性がない遺物のことを『トマソン』と呼ぶらしい。なんだそのオシャレな言葉。オシャレすぎて反吐が出る。こんな言葉を使うようになったらいよいよだ。「自分、トマソンっていう言葉知ってるんだぜ」という薄汚い虚栄心がスケスケだ。意地でも使いたくない。

「……あ、トマソンだ!」

「おいおい、めちゃめちゃ良いトマソンだな」

「トマソン、好きだよトマソン……」
いやあ、嘘みたいなタイミングであまりにも良いトマソンを見つけてしまい、ついつい『トマソンの三段活用』を披露してしまった。私ってばうっかり

……さて、そうこうしているうちに大通りへ出てきた。工業地帯なのか、大型トラックがビュンビュン走っていて迫力満点だ。

しかもちょ、マンション、デケ〜〜〜〜デカすぎて笑っちゃうくらいデケ〜〜〜〜〜

その隣には、ちょっぴり変わった建物が立ち並んでいる。なぜかひとつだけ斜めを向いて建っている『メゾンムラセ』がツボだ。

ビル群に圧倒されていると、バス停があったのだが、

待合イスの三者三様感がすごかった。
これがお笑いトリオならきっと、ロバートのようなアクの強ぉい芸風になっていたことだろう。
駅の反対側へ

さて、駅の方に戻ってきたので、今度は反対の西側を歩いてみる。

するとびっくり。西側も「商店街」が続いていた。いや〜、下町に商店街、こんなんなんぼあってもええですからね

しかもこのツルハドラッグがまあ〜〜〜〜素敵。奥にらせん階段があるのはもちろん、角の柱に看板がきているところが最アンド高。ありがとう商店街、ありがとう梅屋敷。

また、とてつもなく良い雰囲気を醸し出した喫茶店まであった。やはり「喫茶店なくして商店街語るべからず」という太古からの言い伝えにもあるように、イカした商店街に喫茶店は欠かせない。

なんと言っても名前がハンパない。『琵琶湖』て。ここは日本の中心地TOKYOだと言うのに関西のライフラインを店名にするか?そんな粋なネーミングできひんやん普通。近所にあったら週5で通ってまうやん普通。

ずっとこの商店街が続けばいいのに…という願いも虚しく、あのゲートが夢の終わりを告げてきた。

というわけでゆっくり駅へと戻りつつ、今度は住宅街を彷徨うことに。住民でもないよそものがキョロキョロしながらほっつき歩く様は、よもや不審者になりかねないので細心の注意をはらいたい。

道中、「横断幕に空き巣を打診される」という人生で経験することのない珍事にあったが、気を強く持つことでなんとかその場をしのいだ。えらい

無罪を貫いた私をねぎらうかのように、道の曲がり角になぜか「椅子」が設置されているのを発見。ここで儀式でも行われるのだろうか、3方向から木を眺めることができるシュールな造りになっている。

よく見ると真ん中の椅子には『どうぞのいす』と書いてあった。いすをどうぞ、ではない。どうぞのいす、なのだ。新羽駅での“ようこそのお参り”を彷彿とさせる倒置法っぷりに、何か別の意味を勘ぐってしまい夜しか眠れそうにない。
また、梅屋敷ではネコとの遭遇率がまあまあ高かった。ネコ(というか動物全般)に目がない私は、その都度「ネコちゃ〜ん♡」とあやし声で駆け寄るも、

アッ……

アッ……

アッ……
ネコたちの冷たい反応にカオナシのような声しか上げることができず、ただただ心に傷を負って帰路に着いたのであった。
終わりです。
梅屋敷、面白いのでぜひ行ってみてください。